江戸時代の外濠には多摩川を水源とする玉川上水の余水が引き込まれていたと言われています。しかし近代水道の整備に伴って廃止されてしまいます。また、明治以降に整備された下水道は雨水と汚水をまとめて流す合流式下水で、大雨の時には管路で流し切れない未処理下水を外濠に放出する仕組みになっています(現在、未処理下水の放出を少なくする改良工事が東京都によって行われています)。そのため外濠の主な水源は下水の未処理水であり、水質汚濁や悪臭の問題を抱えています。
外濠に発生するアオコ
外濠では戦前から大衆の娯楽や健康の場として人々がボートを漕ぐ風景などがよく見られていました。しかし悪臭の問題や水辺を軽視する風潮などから、残念ながら水辺としての外濠の存在感は薄れていきました。
市ヶ谷駅上空から新見附濠を望む
水辺の価値が見直されてきた現在においても、水辺空間として都市アメニティの機能が果たせているか、景観面で周辺地域との調和がとれているか、多様な生物が共存する自然が確保されているかなど、まだまだ課題が残ります。
外濠は近世の名所絵や近代の絵はがきの題材とされ、江戸時代以来、景勝地として受け継がれてきました。江戸・東京の歴史を伝え、都市の貴重な緑地・水辺空間として重要であるこの外濠を再生し、活用方法を考え、東京都心の重要な資源としていく必要があるのです。
桜の名所としても親しまれる外濠